2001年、10月の健康教室
 

 
 
結核


 
1.結核感染症の現状

 結核は,かつてわが国において国民病と言われた時代がありましたが,国民の生活水準の向上や医学の進歩により,以前に比べ大きく改善してきました。このような状況の下,一般国民のみならず医療関係者や行政担当者までが結核は既に我が国で克服された過去の病気であると錯覚してきたようです。しかし結核は、決して過去の病気ではありません。
 世界保健機構(WHO)は平成5年に結核の非常事態宣言を発表していますが,我が国においても平成9年で約42715人の新規結核患者が発生し,2742人が結核で亡くなるという我が国最大の感染症であります。また,平成9年にはこれまで減少を続けてきた新規発生結核患者数が38年ぶりに,罹患率が43年ぶりに増加に転じたことが明らかになり,今年の7月に厚生省は結核緊急事態を宣言いたしました。
 

2.結核はどのようにして感染するのか

 結核は飛沫感染です。排菌患者の咳やくしゃみにより結核菌を吸い込むことにより感染します。特に,大量に排菌する患者に接する場合,会話したり,排菌患者が咳をしているときには数メートル以内にいるだけで感染します。
 免疫能が正常の健常人の場合,10-20%が発病し,初期感染の発病時期は2年以内です。
 

3.結核にかかりやすい人は特に感染に注意!

       結核にかかりやすい人
1. ツベルクリン反応陰性の若年者(小児・学生)→学校での集団感染
2. アルコール常習者・アルコール依存
3. 癌患者,大手術を受けた患者 →院内感染
4. 免疫不全状態の人 →院内感染
   (AIDS・ステロイド・化学療法中・糖尿病・
    透析患者・肝硬変など)
5. 生活の荒んだ人・規則正しい食生活をしていない人
6. 慢性呼吸器疾患(塵肺・肺気腫・慢性下気道感染症)→院内感染
7. 高齢者(初感染ではなく,再発が多い)→老人施設での集団感染
 

4.結核を疑わせる症状

1. 咳・痰がいつまでも続く(風邪なら1週間で治るはず)
2. 微熱が続く(高熱よりも微熱が多い)
3. 寝汗,倦怠感が続く
4. 胸痛が片方の胸に出現する
 

5. 結核の検査

1. 胸部レントゲン
2. 胸部CT
3. 喀痰検査:顕微鏡で結核菌がみえたら人に感染する可能性が
  あるので隔離対象
4. ツベルクリン反応:
5. 気管支鏡検査:喀痰で結核菌は確認できないがレントゲン写真上,
  結核の疑いのあるとき行う
 

6. 結核になったら

 痰の中に菌が検出される場合を排菌陽性といい,周囲の人に感染の恐れがあるので隔離(結核専門病棟のある病院)の必要があります。治療2週間以内は感染性の危険があるからです。しかし,この場合でも抗結核薬を服用1ヶ月以上経過し,排出菌が耐性菌でなければ,感染性はほとんどなく,外来治療にかえられます。
 痰の中に菌が検出されない排菌陰性の場合は,外来での通院治療が可能です。
 

7. 結核の治療

肺結核の場合は薬物療法だけでほとんど治ります。
多剤併用療法:3-4種類の結核の薬を6ヶ月から9ヶ月にわたり必ず毎日服用
 
肺外結核:腎結核,脊椎カリエス,腸結核,副睾丸結核など肺以外の結核病巣は手術が必要な場合が多いです。この場合,内服療法も併用します。
 

8. 耐性菌の問題

 アメリカでは社会経済ドロップアウトやHIVと結びついた結核の流行の中で多剤耐性菌(結核の薬があれもこれも効かない菌)の流行が大問題になりました。
これはいい加減な治療(薬を飲み忘れる,治療中断など)が原因です。アメリカでは,何らかの抗結核薬への耐性の頻度は13%ですが,幸い日本では6%に留まっています。
 多剤耐性菌に対する治療は非常に困難で予後も厳しいため,厳重な管理が必要となります。
 多剤耐性菌を作らないために,直接監視下で薬を飲んでもらう方法がとられ,効果を挙げています。
 

9. 身近な人が結核になったら

保健所から検診の通知がきます。身近な人が排菌陽性で,ツベルクリン反応が強陽性,または自然陽転した人は抗結核剤1種を6ヶ月間予防内服します。
 
 
 


 
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